富士登山競走:猛暑の中、2926人が挑戦 完走率、全部門で昨年下回る /山梨
◇男子・県勢、林選手が初V/女子・星野選手が大会新−−5合目コース 体力と気力の限界に挑む山岳レース「第58回富士登山競走」(富士吉田市主催、毎日新聞社など後援)が22日、富士吉田市役所を起点に行われた。山頂まで(標高差約3000メートル、21キロ)と5合目まで(同1480メートル、15キロ)の二つのコースに、全国から2926人が出場。時折強い日差しがさす好天気で気温が上昇、暑さに完走率は全部門とも昨年を下回った。5合目コース女子で星野芳美選手(38)が大会新記録を樹立。同男子では、笛吹市の県職員、林大介選手(25)が初優勝を果たした。山頂コースに60歳以上のランナーが89人出場し、14人が完走した。【吉見裕都、藤野基文】 ◇富士北麓、午前10時に28度 県内は22日、高気圧が張り出し晴天に恵まれ、山中を除く全域で真夏日となった。甲府地方気象台によると、▽甲府35・9度▽韮崎34・2度▽上九一色34・5度の3地点で今年の最高気温を更新。 富士北(ほく)麓(ろく)地域も、山頂コースがスタートする前の午前7時の気温は21・4度(河口湖観測点)だったが、気温はぐんぐん上がり、午前10時には28度に。 選手たちは暑さに苦しみ、各コース別の完走者は、山頂コース男子991人(完走率42・5%)▽同女子37人(同27%)▽5合目コース男子319人(同86%)▽同女子70人(同79・5%)だった。 ◆山頂コース男子 ◇「途中でやめようと思った」−−優勝の鏑木選手 優勝した鏑木毅選手(36)は「走るのをやめようかと思った」と話すほど序盤は不調で5合目を7位で通過。しかし、その後の本格的な山岳コースで自力を発揮し6人をごぼう抜き。8合目付近でトップに立つと、そのまま逃げ切った。3連覇をかけた昨年は2位に甘んじ、今年は「年齢的に限界なのか試金石となるレースだった」と話す。 5合目でトップだった藤沢広明選手(33)は鏑木選手にかわされ、2位。しかし、初出場での好成績に「8合目から足が動かなくなった」と苦笑いしながらも満足した様子だった。 5年前に2位に入った福永基晴選手(28)は「絶対に優勝したい」と鏑木選手を徹底マーク。ゴール前、藤沢選手の背中を視野に捕らえたが、力尽きた。 ◆同女子 ◇スタート直後から独走態勢−−3連覇、野尻選手 3連覇を果たした野尻あずさ選手(22)はスタート直後から独走態勢に。足に張りが出るなど万全の体調ではなく、周りに女性選手のいない目標の定めにくいレースだったが、「女性だけではなく、男性も含めた全体の順位を上げようと頑張った」と余裕の展開で、他の女子選手を圧倒した。 2位の橋本ミヨ選手(42)も一人旅。「暑いのでとにかく脱水症状を起こさないよう気をつけた」と、給水所のない6合目で夫ひとしさんに待機してもらい水分補給をするなど自分のペースを守り続けた。 5合目を過ぎて前も後ろも女性選手が見えなくなった坂根充紀栄選手(30)は3位。「登り坂が苦手なのでリードを稼ごうと最初から飛ばしていった」と後半の岩場の登りでも粘りを見せ、イメージどおりのレース展開で上位に食い込んだ。 ◆5合目コース男子 ◇「疲れた」と息を切らす−−林選手 両手を上げゴールに飛び込んだ林大介選手(25)は「優勝はうれしいが、とにかく疲れた」と肩を上下させて息を切らせた。 4位につけていた林選手は、50メートルほど先を走っていた2人の選手を9キロ地点付近でとらえ、一気に2位に浮上。11キロ地点付近で先頭を走っていた選手が転倒し抜き去った後は、そのままトップを独走した。 大塚融選手(36)は自己最高の2位。他の選手が前半に飛ばす中、「最後に力を残すために序盤は抑えて走った」。3合目付近で2位になってからは「1位の選手の背中が見えていたので、もう少し差を縮めたかった」と悔しさをにじませた。 ◆同女子 ◇大会記録狙い、出場種目変更−−星野選手 「大会記録を狙うために、(昨年まで出場していた)山頂コースではなく、5合目コースに出場しました」という星野芳美選手(38)は、大会記録を3分31秒縮めて新記録をたたき出した。「目標が達成できてよかった」と満面の笑みで話した。 星野選手はスタート直後から独走、後続を寄せ付けなかった。「余分な力を入れないよう、楽しく走ることを意識しました」 初出場のレナ・フィッシャー選手(28)は、2回コースを間違えるハプニングにもかかわらず2位。酒井美保選手(31)は6キロ地点から50メートルほど前のフィッシャー選手に引き離された。2人とも完走と順位には「大満足です」と笑顔で話した。 ◇8合目で及ばず 昨年の大会から山頂コースの年齢制限(60歳未満)が撤廃され、60歳以上が昨年より27人多い89人(うち女性1人)となり最難関のコースにチャレンジした。頂上まで4時間半以内の時間制限があるが、14人が見事完走。 山頂女子の60歳以上で唯一の出場選手となった東京都の鈴木冊(さつ)子さん(64)は、2時間半以内の時間制限がある5合目のチェックポイントはクリアしたが、8合目(4時間以内)は数分差で惜しくも及ばなかった。鈴木さんは週4、5日は10キロのランニングをする現役ランナーで、「山頂までいけそうだった。悔しい」と元気いっぱいだった。 60歳以上の完走者でトップだったのは静岡県の友田信郎さん(60)。約1000人の完走者の中でも254位と健闘した。最高年齢は、東京都の市田進さん(67)だった。 ◇初コースに戸惑う 「世界一過酷な山岳レース」とも呼ばれる東南アジア最高峰のマレーシア・キナバル山(標高4095メートル)の山岳レースで昨年上位の成績を残したマレーシア人男女2選手が、山頂コースに出場した。 山頂女子では、ダニー・キリン・ゴンゴット選手(38)が4時間10分58秒で18位と上位に届かず、男子ではミウス・ビン・ベリンティン選手(36)が4時間27分28秒で完走したものの苦戦した。 両選手はキナバル山で登山者の荷物を運ぶポーターの仕事をしている。キナバル山を知り尽くしている両選手も、初めての富士山のレースで戸惑いがあったようだ。 レース後、ゴンゴット選手は「砂利のようなコースで滑ってしまった」と悔しがった。ベリンティン選手は「アスファルトの上でレースをしたことがなかった」と唇をかんだ。 ◇本業はクロカン 山頂女子で3連覇を果たした野尻あずさ選手(22)は、来年2月にイタリア・トリノで行われる冬季オリンピック出場を目指すクロスカントリースキーの選手。 今春、大学を卒業し、佐賀県の人工スキー場を経営する会社に入社。学生時代からオフシーズンの夏は、スキーのポールを持って山間を走るトレーニングに取り組み、その一環として富士登山競走に出場している。 オリンピックを目指す選手とあって、持久力は別格。2位に約11分差を付けて圧勝した。 野尻選手は「3連覇はトリノ出場へ勢いになった」と喜んだ。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇上位入賞者記録 (敬称略) 【山頂コース】 ▽男子 (1)鏑木毅(群馬)2時間49分41秒(2)藤沢広明(神奈川)2時間52分44秒(3)福永基晴(兵庫)2時間53分21秒(4)進藤信(長野)2時間56分49秒(5)鈴木直政(京都)2時間58分10秒(6)柴沢聡(茨城)2時間58分18秒(7)影本哲哉(兵庫)2時間58分38秒(8)戸沢哲二(東京)2時間58分46秒(9)武田直樹(兵庫)2時間59分26秒(10)望月将悟(静岡)3時間5分38秒 ▽女子 (1)野尻あずさ(佐賀)3時間15分27秒(2)橋本ミヨ(東京)3時間26分23秒(3)坂根充紀栄(京都)3時間38分14秒(4)松井一葉(神奈川)3時間42分39秒(5)伊藤祥子(東京)3時間47分15秒(6)小野寺規子(神奈川)3時間57分 【5合目コース】 ▽男子 (1)林大介(山梨)1時間24分43秒(2)大塚融(茨城)1時間26分16秒(3)伊藤雅浩(栃木)1時間28分5秒(4)岡靖朗(大阪)1時間30分6秒(5)藤谷明久(愛知)1時間31分20秒(6)中村直樹(静岡)1時間32分25秒(7)西城克俊(神奈川)1時間34分15秒(8)能城秀雄(千葉)1時間35分35秒(9)田中哲広(長野)1時間35分37秒(10)中西洋一(愛知)1時間36分44秒 ▽女子 (1)星野芳美(静岡)1時間32分12秒(2)レナ・フィッシャー(神奈川)1時間48分39秒(3)酒井美保(兵庫)1時間54分52秒(4)松延香保里(茨城)1時間55分8秒(5)岩根理恵(群馬)1時間55分37秒(6)小西雅子(埼玉)1時間57分20秒 【5合目男女45歳以上】 (1)河西強(山梨)1時間40分54秒(2)島田俊幸(東京)1時間47分17秒(3)榎本光義(神奈川)1時間48分51秒(4)川島健二(東京)1時間49分20秒(5)渡辺孝(群馬)1時間49分38秒(6)石井正人(神奈川)1時間51分8秒
7月23日朝刊
(毎日新聞) - 7月23日16時46分更新
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